目次(7項目)
「医者にマイクロ法人なんて関係ない」と思っていませんか。
2年前、医局退職を決めた直後の僕も同じでした。社会保険料の引き落とし通知を眺めて、フリーランスってこういうもんかと諦めていた頃の話です。
この記事では、フリーランス医師がマイクロ法人を持つ判断軸と設立5ステップ を、マイクロ法人2年目のナマケンが実体験で書きます。
うさ子 そもそもマイクロ法人って、フリーランス医師が会社を作るってどういうことですか?
ナマケン ざっくり言うと「医療以外の収入を受け取る一人会社を作る」こと。僕の場合はブログ・執筆・コンサルの収入をその会社で受け取ってる。中身のある事業があるから運用が成り立つ前提で書いてくよ
この記事でわかること
- マイクロ法人とは何か・勤務医に向かない理由がわかる
- フリーランス医師がマイクロ法人で得られる効果がわかる
- 設立の5ステップと年間維持コストがわかる
- 向かない人と、社保削減だけが目的の運用がNGな理由がわかる
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マイクロ法人とは?医師でも作れるの?
社長1人・従業員ゼロで回す超小規模法人のこと。フリーランス医師なら自分で登記できて、医療以外の事業(ブログ・執筆・コンサルなど)の収入を受け取る一人会社として使います。
マイクロ法人とは、社長(役員)1人で回す極小の株式会社または合同会社のことです。法律上の明確な定義はなく、一人社長の小さな会社を指す通称として使われます。
医師免許とは関係なく、誰でも登記すれば作れます。合同会社なら登録免許税6万円と定款の実費のみ で、最短数日で設立できます。
マイクロ法人で何ができるのか
注意が必要なのは、診療報酬は医師個人または医療法人にしか支払えないという点。一般的な株式会社・合同会社で診療報酬を受けることはできません。
つまりマイクロ法人は 医療以外の収入を受け取るための一人会社 です。ブログ広告収入・コンサル料・書籍印税など、医師として広げやすい副収入を会社の口座で受け取りつつ、本業(フリーランス医師としての給与所得)はそのまま個人で受け続けます。
僕の場合は ブログ・執筆・コンサル の収入をマイクロ法人で受けています。設立時点で「会社で受けたい事業」が決まっていたから踏み切れた、というのが順序として正確です。
うさ子 じゃあ医師としての本業のお給料はマイクロ法人で受け取れないってことですか?
ナマケン 受け取れない。本業の給料はフリーランス医師として個人の口座にそのまま入る。マイクロ法人の口座では「医療以外の事業の売上」だけを受ける。本業と法人で 財布が完全に2つに分かれる イメージだね
まずメリット3点を押さえよう
社会保険料の計算基礎を最低等級まで落とせる・配偶者を第3号被保険者にできる・医療以外の収益を法人に集めて税率を最適化できる、の3点。事業実態を持つフリーランス医師に有力な選択肢です。
メリット① 社会保険料を抑えられる
フリーランス医師がそのまま国民健康保険に入ると、稼げば稼ぐほど保険料が上がる仕組み になっています。医師として高所得になるほど、保険料はどんどん膨らみ、最後は自治体の上限まで張り付きます。
一方、マイクロ法人を作って自分が役員になると、加入する保険が 協会けんぽ に切り替わります。協会けんぽの保険料は、会社が役員に払う給料の金額だけ で決まる仕組みで、本業の医師の収入はまったく計算に入りません。
そして役員給料は自分で自由に決められるので、ランクの一番下まで落としてしまえば、保険料も 最低額のまま固定 できます。本業のフリーランス医師としてどれだけ稼いでも、保険料は動きません。
実際にどれくらい下がるかは ▶ マイクロ法人で社会保険料を圧縮する仕組み で詳しく書きました。
メリット② 配偶者を扶養(第3号)に入れられる
自分が厚生年金に入ると、年収130万円未満の配偶者を 第3号被保険者 ── ざっくり言うと「専業主婦・主夫として扱われる扶養の枠」── に入れられます。
この枠に入った瞬間、配偶者の国民年金保険料(年約21万円)がゼロ になります。月にすると17,000円ぶんの引き落としが消える計算です。
フリーランス医師のまま国保で過ごすとこの枠は使えません。配偶者がいる家庭なら、マイクロ法人化の効果はさらに年21万円ぶん上乗せされます。
うさ子 配偶者の国民年金が年21万円ぶん消えるんですか?それだけでもすごいですね。
ナマケン うちはこれが大きかった。妻の保険料が消えた月の引き落とし明細を見て「制度ってちゃんと使えば味方になるんだ」と思ったな
メリット③ 節税の幅が広がる
副業の収入を マイクロ法人なしで個人で受け取る と、医師の本業の給料と合算されて税金が計算されます。本業の収入が大きいフリーランス医師の場合、副業で1万円稼いでも 半分近くが税金で持っていかれる 計算です。
同じ副業の収入を マイクロ法人で受け取る と、本業とは別の財布扱いになり、法人税(中小法人なら実効15%前後〜)で済みます。
さらにマイクロ法人を持つと、個人事業主のままでは使えない節税制度が解禁されます。代表が 小規模企業共済 です。
小規模企業共済をざっくり言うと、個人事業主や中小企業の経営者だけが入れる、国がやっている退職金の積立制度 のこと。
- 自分で月最大7万円(年最大84万円)まで積み立てる
- 積み立てた金額が そのまま所得から引かれる(その分、所得税・住民税が下がる)
- 将来は退職金として受け取れて、受取時も退職所得控除で税金が抑えられる
積み立てるだけで税金が下がり、しかも将来の備えにもなる、という二重においしい制度。マイクロ法人を持つことで初めて使えるようになる節税枠の代表格です。
自分が作った理由(ナマケン体験談)
フリーランス転身に向けて簿記とFPで税金を勉強しているうちに国保の負担の大きさに気づき、独学でたどり着いた答えがマイクロ法人。金銭面と人生の選択肢を広げる意味の両方で、自分に一番合うと判断しました。
医局退職を決めたあと、フリーランスに切り替わるまでの準備期間にやっていたのは 税金の勉強 でした。簿記3級 と FP3級 を独学で取り、自分のお金まわりを自分で読めるようにするのが目的です。
その過程で気づいたのが、フリーランス医師になると国民健康保険の負担が想像以上に大きい こと。勤務医のころは給料から自動で天引きされていたので意識しなくて済んでいた社会保険料を、フリーランスになると自分で全額払うことになる。月の請求額の桁を見て、正直ひるみました。
「何か負担を減らす方法はないか」と調べ続けるうちに見つけたのが、マイクロ法人という選択肢です。
そこから独学で仕組みを掘り下げた結果、自分にとって最適と思えたのが次の答えでした。
- 医療以外の事業を始めて、その収入をマイクロ法人で受ける
- 結果として社会保険・税金の計算基礎が制度に沿って最小化される
- 同時に 「医師として病院で働く以外の人生の選択肢」 を1つ持てる
金銭面のメリットだけでなく、自分の人生の選択肢を増やすという意味でも、マイクロ法人を持つことが一番自分に合っていると判断しました。
5ステップで設立しよう(合同会社の場合)
法人形態選択→定款作成→法務局登記→法人口座開設→会計ソフト設定の5ステップ。実費6万円・最短1〜2週間で完結します。マネーフォワード会社設立を使えば書類作成は自動化できます。
実際に僕がマネーフォワード会社設立で動いた流れを、そのまま書きます。
STEP 1 法人形態を選ぶ(合同会社が現実解)
合同会社を選びました。理由は登録免許税が 6万円 で済むから(株式会社は約25万円)。社会保険料の最適化効果は両者で変わらないため、自分の事業を回す一人会社として作るなら 合同会社一択 で十分です。
STEP 2 定款をオンラインで作成する
マネーフォワード会社設立 の質問に答えていくだけで、定款と登記書類が自動生成されます。電子定款を選ぶと紙の印紙代4万円がかからず、合同会社の実費は 登録免許税6万円のみ に抑えられました。
STEP 3 法務局に登記する
書類一式を最寄りの法務局に提出します(郵送可)。登記完了まで1〜2週間で、登記簿謄本が取れた日が正式な設立日です。
僕は2025年3月の医局退職と同月で登記まで完了させました。フリーランス転身と並走させると、間に「国保+国民年金期間」が挟まらず、月数ぶんの差額の取り逃しがなくなります。
STEP 4 法人口座を開設する
登記が完了したら、法人名義の銀行口座を開設します。登記直後が口座開設審査の通過率が最も高いタイミング なので、設立書類が新しいうちに動くのが正解です。
ネット銀行(住信SBI・GMOあおぞらなど)が手数料・利便性ともにフリーランス医師の小規模法人には向いています。1年使った実例は ▶ GMOあおぞらネット銀行 法人口座を医師が1年使ったレビュー にまとめています。
STEP 5 会計ソフトを入れて帳簿を始める
法人を持つと法人決算と個人確定申告の両方が必要になります。マネーフォワードクラウド会計 に法人口座とクレジットカードを連携しておくと、ほとんどの取引が自動仕訳されて、日々の記帳作業がほぼゼロになります。
税理士に頼むかどうか・どこまで自分でやるかは、会計の知識や事業規模で変わります。マイクロ法人の会計まわりを自分で回すノウハウは別記事でまとめる予定です。
ナマケンのひとこと
僕の1期目はマネフォの自動仕訳と税理士顧問の二段構えで回しています。事業実態を帳簿で残せないと、社保最適化の前提そのものが崩れます。
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先に落とし穴を確認しよう──向かない人・やってはいけないこと
事業実態がない法人・社保削減だけが目的の運用は否認や規制リスクがあります。加えて将来の厚生年金が減る・年30〜40万円の法人維持コスト・年収1,000万円未満では赤字になりやすい点も併せて確認してください。
僕がマイクロ法人を運用しているのは、ブログ・執筆・コンサル収入を法人で受ける 事業実態があるから です。社保削減はその副次効果という位置づけです。
勤務医がマイクロ法人を作るのは逆効果
勤務医のうちにマイクロ法人を作ると、社会保険料が逆に増えます。
勤務医は勤務先の健保組合ですでに社会保険に加入しています。マイクロ法人を新設すると、勤務先の社保とマイクロ法人の社保が 二重適用 され、両方で保険料を払うことになります。本業の診療報酬を法人に流すことも医師法上できません。
医療以外の副業収入がよほど大きくない限り、勤務医にとってマイクロ法人は コストしか生まない箱 です。手を出すならフリーランス転身と同月着手が筋になります。詳しい理由は ▶ 勤務医はマイクロ法人を作れる?──結論「作れるけど意味がない」3つの壁と例外パターン で書いています。
将来の年金受給額が下がる
役員報酬を最低ランクにすると、将来もらえる老齢厚生年金(サラリーマンが上乗せでもらえる年金部分)も最低水準になります。
具体的には、給料のランク88,000円で30年加入した場合、上乗せ部分は 月5,000円前後。30年積み立てて月のサブスク1〜2本ぶんしか乗りません。国民年金と合わせても 月7万円台 にしかなりません。
このギャップを埋めるために、僕は NISA・iDeCo(第2号枠)・小規模企業共済 の3層を並走させています。
- NISA: SBI証券で全世界株式インデックス(オルカン)1本に積み立て
- iDeCo: マイクロ法人役員=第2号被保険者 枠で月23,000円拠出
- 小規模企業共済: 少額で積み立て中(NISAと高配当株投資を優先しているため満額ではない)
うさ子 月7万円台だけだと不安ですけど、別枠で積んでおけば形になりそうですね。
ナマケン 目先の社保削減だけ取って老後を空っぽにするのが一番こわい。マイクロ法人を作る人ほど、3層の積立をセットで設計するのが筋だと思う
iDeCoの掛金設定や運用の注意点は ▶ iDeCo フリーランス医師が知っておくべき節税効果・掛け金・注意点 で扱っています。
法人維持コストが年30〜40万円かかる
固定で出ていくコストを整理します。
- 法人住民税均等割(赤字でも毎年払う固定の税金):年7万円
- 税理士顧問料:年20〜30万円(決算のみスポット依頼なら年7〜15万円)
- 会計ソフト:年3〜5万円
社会保険料削減効果がこの固定コストを上回ることが大前提です。事前シミュレーションなしで設立すると、コストだけが残る最悪パターンになります。
年収1,000万円未満のフリーランスは慎重に
年収500〜800万円の場合、国保料・所得税のベースが低く、法人化しても固定コストで削られてトントンになることがあります。
フリーランス転身を考えているなら、初年度から年収1,000万円を超えるかどうか を判断軸にしてください。僕の場合は本業の年収が1,000万円台後半のレンジに乗る見通しが立っていたので、迷わず登記まで動けました。
よくある質問
設立タイミング・勤務医との違い・税理士の要否・年金への影響・効果が出る所得ラインの5問に、2年運用した目線で答えます。
マイクロ法人っていつ作るのがベストですか?
フリーランス転身と同月 がベストです。間が空くと国保+国民年金期間が発生し、その月数ぶんの差額が取り逃しになります。
僕は医局退職と同じ2025年3月にマイクロ法人を登記しました。社会保険の観点でも、簿記取得・法人口座申込・会計ソフト導入を一気に並走させる観点でも、同月着手が一番ロスが少ないです。
勤務医はマイクロ法人を作れますか?
作ること自体は可能ですが、勤務医にとってマイクロ法人は原則デメリットしかありません。勤務先の健保組合とマイクロ法人の協会けんぽが二重適用され、保険料が増えます。
本業の診療報酬を法人に流すことも認められておらず、医療以外の副業収入がよほど大きくない限り、設立コストを回収できません。勤務医のうちは手を出さないのが正解 です。
マイクロ法人の設立に税理士は必要ですか?
設立そのものに税理士は必須ではありません。マネーフォワード会社設立やfreee会社設立を使えば、定款作成から登記書類まで自動生成できます。合同会社の実費は 登録免許税6万円のみ です。
僕は初年度からリベ大税理士法人と顧問契約しています。設立直後は判断ポイントが多く、自己流で固めると後の修正コストが高くつくと判断したためです。1期目決算が終わったら自走に切り替える方針で動いています。
マイクロ法人を作ると将来の年金は減りますか?
減ります。役員報酬を最低ランクにすると老齢厚生年金の受給額は 月数千円レベル です。NISA・iDeCo(第2号枠)・小規模企業共済の3層で老後資金を別建てする設計が前提になります。
社会保険料削減効果が出る年収ラインはいくらですか?
目安は 年収1,000万円超 です。それ以下では国保料・所得税のベースが低く、法人維持コスト(均等割7万円+税理士・会計ソフト)を回収しきれないケースがあります。
フリーランス転身前年の所得を基準にシミュレーションしてから判断してください。なお、削減効果が出る所得帯であっても、事業実態がない法人運用はやらないことが前提です(記事中盤参照)。
まとめ|マイクロ法人は「お金」より「時間」を取り戻す手段
事業実態を持つフリーランス医師にとって、マイクロ法人は社会保険料の計算基礎を最低等級まで落とせる有力な選択肢です。浮いた保険料はオンコールバイト換算で何回ぶんかに相当し、その時間を健康・家族・事業に回せます。
今日のポイントを整理します。
- マイクロ法人とは一人社長の小さな会社で、医療以外の事業の収入を受け取るために使う
- フリーランス医師が運用すると 社会保険料が大きく抑えられる
- 配偶者を扶養に入れられる(国民年金保険料がゼロになる)
- 勤務医は社保の二重適用で逆効果 なので手を出してはいけない
- 維持コスト年30〜40万円を踏まえると、年収1,000万円超が損益分岐点
- 社保削減だけが目的の「中身のない法人」は否認・規制リスクが大きいので作らない
マイクロ法人運用の本質は、税金や社保を削ることそのものではなく、削れた分を「自分の時間」に変えられる ことです。年単位で浮いた保険料は、当直バイトやオンコール何回ぶんかに相当します。その分の時間を家族・健康・新しい事業に回せる。
ここまで読んで「自分にも合うかも」と思えた人は、まずは姉妹記事で社会保険料の圧縮構造を確認してみてください。仕組みが分かるほど、フリーランス医師としての働き方の選択肢が広がります。
ナマケンのひとこと
僕は住信SBIとGMOあおぞらに同時申込→先に通ったGMOあおぞらを採用しました。社保・国税・地方税・税理士報酬の口座振替を一本化できるのが決め手で、登記から1週間以内に動くと審査が通りやすくなります。
口座開設・維持費無料
ナマケンのひとこと
僕も登記当日にマネーフォワードクラウドを開きました。マイクロ法人は帳簿で事業実態を残せて初めて成り立つので、ここを後回しにしないのが正解です。