目次(8項目)
「マイクロ法人で年120万円節税?そもそもマイクロ法人ってなに?」
そんな反応をした読者の皆さん、めちゃくちゃまっとうなのでご安心ください。
僕もフリーランスになる直前まで、マイクロ法人なんて言葉、正直1ミリも知りませんでした。医局にいた頃は税金も社会保険も勝手に給料から引かれていくもので、自分でコントロールできるなんて発想がそもそもなかったんです。
でもフリーランスに転身する時、ちゃんと調べてみたら驚きました。
「フリーランス医師として働きながら、自分で小さな会社(マイクロ法人)を一つ作っておくだけで、社会保険料が年間100万円以上変わる」という話が出てきたんです。
半信半疑で自分で作って実際に運用してみたら、年間で約120万円下がりました。これは決して盛ってません。
うさ子 いやいや、そもそもマイクロ法人ってなんですか?会社を作るって、医者にそんなことできるんですか?
ナマケン 結論、できます。むしろフリーランス医師こそ作るべき。この記事は「マイクロ法人ってなに?」からスタートして、僕が実際に得した金額を根拠つきで最後まで解説します。
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そもそもマイクロ法人ってなに?医師でも作れるの?
マイクロ法人とは社長1人・従業員ゼロで回す超小規模な会社のこと。医師でもフリーランスであれば株式会社や合同会社として自分で作れます。診療報酬は受けられませんが、節税目的の「器」として活用します。
まず言葉の整理から。
マイクロ法人とは、社長1人(役員1人)で回す極小サイズの株式会社または合同会社のことです。法律上の明確な定義があるわけではなく、要するに「一人社長の小さな会社」を指す通称です。
医師免許とは関係なく、誰でも登記すれば作れます。合同会社なら登録免許税6万円と定款の実費だけで、最短数日で設立できます。
診療報酬は法人で受け取れない
注意が必要なのは、診療報酬は医師個人または医療法人にしか支払えないという点です。一般的な株式会社・合同会社で診療報酬を受けることはできません。
じゃあ何のために作るのか。
答えはシンプルで、節税のための「器」として使うためです。ブログ広告収入・情報発信の報酬・コンサル料・書籍印税など、医療以外の収入を法人で受けつつ、本業のフリーランス医師としての報酬とは別建てで「小さな法人」を並走させて、社会保険と税金の仕組みを最適化します。
医師が作るとどう得なのか(ざっくり)
仕組みの細かい話は後ろでするとして、ざっくりのイメージを先に渡します。
- フリーランス医師としての本業の報酬はそのまま受ける(各病院から給与所得ベースで)
- 同時に自分で作ったマイクロ法人の「代表」になり、月数万円の役員報酬を自分に払う
- 社会保険は法人側(低い役員報酬ベース)で計算されるので、めちゃくちゃ安くなる
- 配偶者を法人の保険の扶養に入れられるので、奥さん・旦那さんの年金保険料もゼロにできる
これだけで、僕の場合は年間約120万円浮きました。
もっと踏み込んで「なぜ作ろうと思ったか」「メリットとデメリット」は別記事で詳しく書いています。
前提|フリーランス麻酔科医の報酬は「給与所得」として扱われる判例があります
東京地裁 平成24年9月21日判決(平成23年(行ウ)第127号)では、フリーランス麻酔科医として各病院から受け取る報酬は、病院側の指揮命令下にあることを理由に「給与所得」に該当すると判断されました。
実務上は事業所得として申告している医師もいますが、税務調査で否認されるリスクがあるグレーゾーンです。本記事では「各病院から給与所得として源泉徴収済みで報酬を受け取り、かつ勤務先の社会保険には加入していない(国保・国民年金に自分で入っている)フリーランス医師」を前提に、マイクロ法人節税の話を進めます。
所得区分の詳細と判例の射程は別記事でまとめる予定です。
実数値公開|フリーランス医師のマイクロ法人で社会保険料が年間約120万円下がった
マイクロ法人を持たないフリーランス医師(国保+国民年金)の年148万円に対し、マイクロ法人化で年26万円まで下がり、差額は約120万円。配偶者の国民年金3号化も含みます。
結論から言うと、僕がフリーランス化と同時にマイクロ法人を作ったことで、社会保険料は年間で約120万円下がりました。
内訳を表で整理するとこうなります。東京都・40歳未満・配偶者1人(扶養)・2025年度料率をベースにしています。
| シナリオ | 健保・国保 | 年金 | 合計/年 |
|---|---|---|---|
| 勤務医(所得1,600万・参考値) | 約83万円 | 約71万円 | 約154万円(本人負担) |
| フリーランス医師(法人化なし) | 約106万円(国保上限) | 約42万円(本人+配偶者) | 約148万円 |
| マイクロ法人(役員報酬月4.5万) | 約6.9万円 | 約19.3万円 | 約26.2万円 |
僕が比較軸として使うのは、真ん中の「フリーランス医師(法人化なし)」のパターンです。勤務医を辞める時点で勤務医の社保は使えなくなるので、現実的な選択肢は「自分で国保と国民年金に入る」か「マイクロ法人を作って協会けんぽに入り直す」かの二択なんですよね。
内訳① マイクロ法人を持たないフリーランス医師との比較で年約122万円
マイクロ法人を作らず国民健康保険と国民年金で過ごすと、所得1,500万円相当で国保料は東京23区の上限(年約106万円)に張り付きます。国民年金が本人分で年約21万円。
これに対してマイクロ法人を作って役員報酬を月4.5万円に設定すると、協会けんぽの標準報酬月額は最低等級の58,000円、厚生年金は88,000円(最低等級が適用される)になります。労使合計の保険料は年間26万円台に落ち着く計算です。
148万円 − 26万円で、差額は約122万円/年。
内訳② 配偶者の国民年金が第3号で免除される効果
もう1つ見落としがちなのが、配偶者の年金です。
マイクロ法人を持たないフリーランス医師のままだと、配偶者も第1号被保険者として国民年金を自分で払う必要があります。月17,510円×12ヶ月で、年間約21万円。
マイクロ法人を作って自分が協会けんぽ・厚生年金に入ると、配偶者は第3号被保険者になれます。この枠に入った瞬間、配偶者の国民年金保険料はゼロになります。
つまり「配偶者がいるかどうか」で、マイクロ法人化の破壊力はさらに年21万円ぶん跳ね上がるわけです。
社会保険料だけで見た3シナリオの結論
- 勤務医を続ける: 約154万円/年(本人負担のみ)
- フリーランス医師(法人化なし): 約148万円/年
- フリーランス+マイクロ法人: 約26万円/年(会社負担込み)
「フリーランス化するなら同時にマイクロ法人を作る」のが金銭的には圧倒的に合理的、というのが僕の結論です。
フリーランス医師のマイクロ法人が社会保険料を下げられる仕組み
マイクロ法人側で役員報酬を最低等級まで落とすことで、健康保険と厚生年金の計算基礎(標準報酬月額)が最小化されるためです。本業(フリーランス医師)の報酬は健康保険料の計算に入りません。
ここは仕組みを理解しておいたほうが応用が効くので、少し踏み込んで説明します。
「二刀流」で標準報酬月額を最低等級に落とす
マイクロ法人の節税スキームは、よく「二刀流」と呼ばれます。
- 法人側: 少額の役員報酬を自分に払う(健康保険・厚生年金の計算基礎はこちら)
- 本業側: フリーランス麻酔科医として各病院から給与所得で報酬を受ける(こちらは健康保険料の計算に入らない)
役員報酬を月4.5万円に設定すると、協会けんぽの標準報酬月額は第1等級の58,000円、厚生年金は最低等級の88,000円が適用されます。本業の報酬がいくら増えても、この計算基礎は動きません。
ここが国保との決定的な違いです。国保は世帯の所得全額が保険料算定に入りますが、協会けんぽは標準報酬月額だけで完結します。
配偶者を第3号被保険者にできる構造
もう一段、制度設計上の裏口があります。
自分が厚生年金に入ると、年収130万円未満の配偶者を第3号被保険者にできます。これは年金保険料を払わずに国民年金の加入期間をカウントできる、主婦・主夫向けの優遇制度です。
マイクロ法人を持たないフリーランス医師だとこの枠が使えず、配偶者にも国民年金保険料を払わせる必要があります。マイクロ法人を作った瞬間、この負担が消える。
勤務医はなぜマイクロ法人を作れないのか
「じゃあ勤務医のうちに作ればいいじゃん」と思うかもしれませんが、実はここに法的な壁があります。
勤務医の診療報酬は医療法上、医師個人または医療法人にしか支払えません。一般的なマイクロ法人(株式会社・合同会社)で診療報酬を受け取ることは、医師法と保険医療制度の両面で認められていないんです。
だからマイクロ法人節税は実質的にフリーランス医師の特権で、勤務医のうちは手が出せない。逆に言えば、フリーランス化のタイミングで仕掛けないと、この差額は永遠に取り逃します。
勤務医とマイクロ法人の関係は別記事で詳しく書いたので、気になる方はこちらへ。
ナマケンが実際に使っている節税ツール・制度3つ
小規模企業共済(月最大7万円)、マネーフォワードクラウド会計(帳簿・決算の自動化)、住信SBIネット銀行の法人口座(振込手数料削減)の3点セットが運用の土台です。
仕組みを理解しても、ツールが揃っていないと実務が回りません。僕が実際に使っているのは次の3つです。
小規模企業共済(月最大7万円)
小規模企業共済は、国が運営する経営者向けの退職金積立制度です。月額1,000円〜7万円まで掛金を選べて、掛金の全額が所得控除になります。
年84万円(月7万円×12)を満額で積み立てれば、所得税・住民税を合わせて概算で年30万円前後の節税になります。
節税だけを考えるならMAX7万円を積み立てるべきですが、僕はNISA、高配当株投資も併用しているため、こちらは少額で積み立てています。iDeCoとも併用可能です。
iDeCoとの使い分けは別記事にまとめています。
マネーフォワードクラウド会計(帳簿・確定申告の自動化)
マイクロ法人を作ると、当然ながら法人決算と個人の確定申告、両方をやる必要があります。
僕はマネーフォワードクラウド会計を両方で使っています。銀行口座・クレジットカードを連携しておくと、ほとんどの取引が自動で仕訳されるので、日々の記帳作業がほぼゼロになりました。
法人税申告書まで自分でやるのはさすがにしんどいので、決算だけは税理士にスポットで依頼する運用にしています。それでも年間十数万円で済むので、会計ソフト+税理士スポットが最もコスパがいい組み合わせだと思います。
法人口座(住信SBIネット銀行)
法人を作ったら、個人口座とは別に法人名義の銀行口座が必要です。
僕は住信SBIネット銀行の法人口座を使っています。理由はシンプルで、振込手数料が他行の法人口座に比べて圧倒的に安いから。振込件数が多いフリーランスだと、年間で数万円の手数料差になります。
口座開設はオンラインで完結し、登記簿謄本を提出すれば1〜2週間で開設できました。設立直後の口座開設は審査が通りやすいタイミングなので、法人設立と同時並行で動くのがおすすめです。
マイクロ法人節税のデメリット・注意点
将来の厚生年金受給額が減る、税理士費用など年数十万円の法人維持コスト、所得が年1,000万円を下回ると節税効果より維持コストが上回る恐れ、の3点が主なデメリットです。
ここまで強調してきましたが、マイクロ法人は万能ではありません。僕自身も踏んでからわかったトレードオフが3つあります。
将来の年金受給額が下がるトレードオフ
役員報酬を最低等級まで落とすということは、将来もらえる老齢厚生年金も最低水準になるということです。
はっきり言ってこれはかなり恐ろしいことです。
目安として、標準報酬月額88,000円で30年間厚生年金に加入した場合、上乗せ分は月額5,000円前後。国民年金と合わせても月7万円台にしかなりません。
このギャップは小規模企業共済・iDeCo・NISAなど、別の老後資金プールで埋める前提で設計する必要があります。
税理士費用と法人維持コスト
法人を持つと、最低限のコストがかかります。
- 法人住民税均等割: 年7万円(赤字でも払う)
- 税理士顧問料: 年10〜20万円(決算のみスポットなら5〜10万円)
- 会計ソフト: 年3〜5万円
合計で年20〜30万円は固定で出ていきます。節税効果がこれを上回らないと意味がないので、損益分岐点の計算は必須です。
節税効果が出る所得ライン
経験上、マイクロ法人の節税メリットが維持コストを明確に上回るのは、年収1,000万円を超えたあたりからです。
年収500万円〜800万円くらいのフリーランス医師だと、国保と所得税のベースがそもそも低く、法人化しても維持コストで削られてトントン、あるいは赤字になるケースもあります。
フリーランス転身を考えているなら、初年度から年収1,000万円を超えそうかどうかで判断するのが安全です。
フリーランス医師のマイクロ法人についてよくある質問
役員報酬の最適解・設立の依頼先・会計ソフトの使い分け・年金受給への影響・節税効果が出る所得ラインの5つを実務目線でまとめます。
役員報酬はいくらに設定するのが節税の観点で有利?
標準報酬月額の最低等級を狙うなら月4.5万円〜6.3万円未満に設定します。健康保険は58,000円、厚生年金は88,000円で保険料が最低になり、それ以上の報酬を取ると段階的に保険料が増えます。
僕は月4.5万円にしていますが、生活費は本業(フリーランス医師)側の所得から取る前提です。
法人設立は税理士に頼まなければいけない?
必須ではありません。マネーフォワード会社設立やfreee会社設立といった無料ツールを使えば、定款の作成から登記書類の作成まで自動でできます。
実費として、定款認証(電子)0円、登録免許税6万円(合同会社の場合)が必要ですが、税理士に頼むよりは15〜20万円安く済みます。
マネーフォワードだけで法人の確定申告まで完結できる?
マネーフォワードクラウド会計は仕訳と決算書作成までをカバーします。ただし法人税申告書の作成は別途「マネーフォワード クラウド申告」か税理士が必要です。
僕は決算だけスポットで税理士に依頼しているので、この記事のコストシミュレーションもその前提です。
マイクロ法人を作ると将来の年金は減る?
減ります。役員報酬を最低等級にすると厚生年金の加入実績が下がり、将来の老齢厚生年金は月数千円レベルに収まります。
その分、小規模企業共済(月7万円)とiDeCo(月6.8万円)、NISAを最大限活用して、老後資金を別途積み立てる設計が定石です。
所得いくらから節税効果が出る?
目安は年収1,000万円超からです。それ以下だと国保料や所得税のベースが低く、法人維持コスト(均等割7万円+税理士・会計ソフト)を回収しきれません。
フリーランス転身前年の所得を基準に、シミュレーションしてから決めるのが安全です。
まとめ
フリーランス医師がマイクロ法人を作ると、社会保険料は年148万円が26万円まで下がり、配偶者の国民年金3号化も含めて年約120万円の削減効果があります。勤務医は法的に作れないため、フリーランス化のタイミングが唯一の仕掛けどころです。
今日の要点を3行でまとめます。
- フリーランス医師がマイクロ法人を作ると、社会保険料は年148万円 → 年26万円に落ちる(差額約122万円)
- 配偶者を第3号被保険者にできる効果で、さらに年21万円ぶんが浮く
- 維持コスト(年20〜30万円)を踏まえると、年収1,000万円超のフリーランス医師に最適解
マイクロ法人の節税は、派手な裏技ではなく「制度に沿って標準報酬月額を最適化する」という地味な作業の積み重ねです。でも一度組めば10年、20年と効き続けます。
フリーランス化と同時に踏むか、踏まずに数年後に後悔するか。僕自身は、このタイミングで知ることができて本当に良かったと思っています。
ナマケンのひとこと
法人口座は設立直後が審査通過率も最高で、開設のハードルが一番低いタイミング。住信SBIは振込手数料が安いので、運用開始後のコストも抑えられます。
口座開設無料
ナマケンのひとこと
マイクロ法人の節税は、帳簿をしっかりやって初めて成り立つ。僕は設立初日にマネーフォワードに登録しました。