目次(11項目)
働けば働くほど、手取りが増えなくなる。
医局にいた頃、当直明けの朝に振り込まれた給与明細を見て、ふと違和感を覚えたことがあります。額面は確かに増えているのに、手取りは伸び悩む。「これだけ働いて、これしか残らないのか」と思いました。
その正体は 累進課税 ── ざっくり言うと「稼ぐほど税率が階段状に上がる仕組み」です。
医師は累進課税の影響を受けやすい構造を持っていて、高時給×長時間労働×社会保険料の重みの三拍子がそろいます。
そして、もうひとつ大事なこと。
お金を稼ぐことは、それ自体が幸福ではありません。
時間も健康も家族も削って稼いだ年収が、累進課税で半分以上消えていく。それなら、稼ぎを抑えて空いた時間を健康・家族・投資に振ったほうが、人生の収支は良くなる。それが医師にとっての本当の合理だと、僕は思っています。
この記事では、累進課税と社保の構造が医師の手取りをどう削るかを体感ベースで整理して、距離を取るための2つの再設計ルート──フリーランス転身とマイクロ法人化──を紹介します。
うさ子 累進課税って言葉は知ってるけど、医師がそんなに損してるってあまり実感ないんですよね。
ナマケン それがいちばん怖い。気づかないうちに「働けば働くほど時給が下がる」状態になっているのが医師の典型なんだ
この記事でわかること
- 累進課税と社保の構造が、医師の手取りをどう削るかが体感でわかる
- 年収帯別の「次の100万円が手元にいくら残るか」の現実が見える
- 抜け出す2つのルート(フリーランス転身/マイクロ法人化)の使い分けがわかる
- 勤務医・フリーランス医師、それぞれが今打てる手が整理できる
結論:医師の働き方は「稼ぐ以外への分散」で取り戻せる
累進課税で時間あたり手取りが下がる構造を、フリーランス転身で時間を取り戻し、マイクロ法人と投資制度(NISA・iDeCo)に分散することで巻き返すのが医師の働き方再設計の定石です。
先に結論を置きます。
医師の手取りは、年収が上がるほど「単位時間あたり」では伸びにくくなります。これは累進課税と社会保険料の合算が、年収カーブを内側に折り込むためです。ここから抜け出すルートは2つあります。
- Aルート:フリーランス転身 — 労働時間を圧縮し、自由時間を取り戻す
- Bルート:マイクロ法人化 — 給与を抑え、社会保険料を最小化する
Aルートは勤務医に向いた選択肢、Bルートはフリーランス医師に向いた選択肢です。両方を組み合わせ、空いた時間と削減した社保を健康・家族・投資に分散すると、医師の働き方は別物になります。
僕自身、医局を出てフリーランスになり、同時にマイクロ法人を作りました。
社会保険料は 年148万円から26万円 に下がり、稼働日数も週4日 + スポットの設計で自由時間が大きく増えました。年148万円は 月12万円分の給料が消えていた ということです。それが月2万円ちょっとに変わりました。
まず数字で「稼ぐほど時給が下がる」を確認しよう
年収1,000万→1,500万で手取りは約280万円増えますが、年収2,500万→3,000万では約250万円しか増えません。差は税率と社保の累進構造によるものです。
累進課税が医師の手取りにどう効いているかを、まず数字で見ていきます。
年収帯別 手取り早見表(給与所得・独身・社保込み概算)
ざっくりとした目安です(各種控除・自治体差で前後します)。
| 年収 | 手取り(年) | 上の年収帯との差 | 限界税率帯 |
|---|---|---|---|
| 1,000万円 | 約720万円 | ─ | 23% |
| 1,500万円 | 約1,030万円 | +310万円 | 33% |
| 2,000万円 | 約1,320万円 | +290万円 | 40% |
| 2,500万円 | 約1,580万円 | +260万円 | 40〜45% |
| 3,000万円 | 約1,830万円 | +250万円 | 45% |
注目してほしいのは「上の年収帯との差」の列です。
額面は500万円ずつ増えているのに、手取りは 310万→290万→260万→250万 と減っていきます。
つまり、追加で500万円稼いでも、手元に残るのはだいたい半分。残り半分は税金と社保で消えています。
これが累進課税の構造的な負担の正体です。
限界税率55%の世界 ── 1万円稼いだら、いくら残るか
所得税の最高税率は45%。住民税10%を足すと、合計で最大55%に達します。
数字だけ見るとピンと来ないかもしれません。
体感に直すとこうなります。
当直バイトで1万円稼ぐと、税金で5,500円持っていかれて、手元には4,500円しか残らない。
ここにさらに社会保険料が約15%乗ります(給料のランクに上限があるので、ある年収以上は頭打ち。詳しい計算式は別記事で)。
つまり年収2,000万円を超えた医師は、「次に稼ぐ100万円」のうち60〜70万円が消える世界で働いていることになります。
うさ子 半分以上が税金と社保ですか……それは確かに「もう一件バイト入れよう」とは思えなくなりますね。
ナマケン むしろここまで来ると「働かない選択」のほうが合理的になる。時間を売って稼ぐより、健康と家族と投資に振ったほうが収支が合うんだ
高所得者の社保は「上限があってもそんなに緩くない」
所得税には上限税率がありますが、社会保険料も「給料のランク」に上限があります。
ただし医師の年収帯ではほぼ全員上限に張り付いていて、上限張り付き=最大ランクで保険料を払い続けるということ。
具体的には、年200万円超が社保に消えていきます。
「税金と社保で年収の4割が消える」という肌感覚は、医師にとって誇張ではありません。
医師は累進の影響を受けやすい──職業特性の再確認
医師は高時給・長時間労働・社保上限張り付きの三拍子で累進課税の影響を受けやすい職業です。とくに勤務医は社保込みの負担が大きく、対策の選択肢も限られます。
なぜ医師は他の高所得職業と比べても累進の影響を受けやすいのか。理由は4つあります。
① 高時給×長時間労働の組み合わせ
医師の時給は他職種と比べて高い。ただし「医師の労働時間」は同じく長い。当直、オンコール、緊急手術、書類仕事、学会発表。
時給が高いまま労働時間も伸びるので、年収が累進課税のレッドゾーンに突入しやすいのです。弁護士・経営者など同じ高所得職でも、医師ほど「時間ベースで稼ぎが積み上がる」職種は珍しい。
② 勤務医は社保込みでさらに負担が大きい
これは特に強調したい点です。
勤務医の社会保険料は、給与から天引きされます。高給な医師ほど「給料のランク」が上限に張り付いて、毎月20万円近く消えていきます。
ここで知っておきたいのは「給料は半分しか払われていない」という話。
社会保険料は本人と病院が半分ずつ負担していて、本人負担分しか給与明細には載りません。
例えるなら、年収2,000万円の医師の本当のコストは年収2,400万円くらい。残り400万円は明細に出ない形で、病院があなたの代わりに国に納めています。
つまり病院から見たあなたの人件費は、給与明細の額より2割増し。そのうえで本人の手取りは累進課税で削られていくわけです。
③ 給与所得しかなく節税の幅が狭い
医師は基本的に給与所得だけで生きている職業です。給与所得控除があるとはいえ、それ以外で経費を落とす自由はほぼゼロ。
自営業者なら、仕事に使った費用を給料から引ける仕組みが豊富にあります(経費・減価償却・損益通算)。
細かい仕組みは脇に置いて要点だけ言えば、売上500万円のうち300万円を経費で使えば、税金は残り200万円分しかかからない世界です。
医師にはこれが使えません。
しかも所得分散もできない。個人事業主なら配偶者や家族に給与を払って所得を分けられますが、給与所得オンリーの勤務医にはそのレバーもない。
結果として、累進課税の上の方の税率がそのまま剥き出しに効きます。これが医師の節税の構造的弱点です。
④ 開業という選択肢の重さ
「累進課税が嫌なら開業すればいい」という意見はもっともです。ただし開業は事業リスク・初期投資・経営責任が一気に乗ってきます。
僕も一時期は開業を検討しましたが、調べれば調べるほど「自由を得るために別の鎖を負う」構造が見えてきて、現実的な選択肢から外れました。
開業以外で、医師が働き方の総合収支を取り戻す方法はあるのか。あります。それが次の章で解説する「2つのルート」と、その先の分散投資の発想です。
「時間あたりの価値」で働き方を測り直そう
医師の働き方は年収ではなく『時間あたりの可処分所得+自由時間の価値』で測るべきです。この視点に立つと、稼ぎ続けるより分散投資したほうが人生の収支が良くなることが見えてきます。
ここで、医師の働き方を測る指標を1つ提案します。
時間あたりの価値=時間あたり可処分所得+自由時間の経済価値(広義の労働コスパ)。
時間あたり可処分所得=真の時給
年収ではなく「年収÷年間労働時間」で時給を出します。さらに税金と社保を引いた可処分所得ベースで再計算する。
年収2,000万円の勤務医が平日10時間×週5日(年約2,500時間)働くと、可処分所得ベースの時給は約 5,300円。
これは勤務医の体感より低い数字のはずです。コンビニのアルバイトの3〜4倍、というぐらいの時給で20年戦っているのが勤務医のリアルです。
自由時間の経済価値
「自由に使える時間」にも経済価値があります。家族と過ごす時間、自己投資、副業、健康維持。
これを単純に「もし副業したらいくら稼げるか」で評価すると、当直明けの非番1日は数万円分の価値を持ちます。失われた自由時間は、給与明細には載りません。
持続可能性で「生涯年収」は逆転する
ここがいちばん大事な視点かもしれません。
年収を最大化しようとしてバイトを詰め込んだ結果、体を壊したり、家族との関係が悪くなったり、メンタルが削れたりすれば、現役として働ける期間そのものが短くなります。医師人生は40年単位の長期戦です。
35歳で年収3,000万円を5年続けて燃え尽きるより、35歳で年収1,800万円のペースを20年続けたほうが、累計収入は遥かに大きい。
- A. 短期最大化: 年収3,000万 × 5年 → 燃え尽きで早期リタイア → 累計1.5億円
- B. 持続最適化: 年収1,800万 × 20年 → 健康・家族・自由を保ちつつ働き続ける → 累計3.6億円
健康・家族・メンタルは、生涯年収を支える土台でもあります。土台が崩れれば、上に積んだ年収もまるごと崩れる。
うさ子 若いうちに稼げるだけ稼ぐのが正解だと思ってました。でも続けられなくなったら本末転倒なんですね。
ナマケン そう。短距離走で100m走り切って倒れる医師より、マラソンで40km走り切る医師のほうが、最終的に届く距離は長い。早く気づいた人ほど得する話なんだ
「稼ぐ」を分散投資に置き換える発想を持とう
当直やオンコールで時間を売って稼ぐより、その時間を健康・家族・自己投資・NISA・iDeCoに分散したほうが人生の収支は良くなります。マイクロ法人とフリーランス転身は、この分散投資を実装するための手段です。
ここからが思想の核です。
医師の働き方を見直して再設計するときに、僕がいちばん大事だと思っているのは「稼ぐ」を分散投資に置き換える発想です。当直やオンコールを詰め込んで月+50万円稼ぐより、その時間を健康・家族・知識・運用に振り分けたほうが、人生の総合収支は良くなる。
これは精神論ではなく、収支計算と機会費用の話です。
健康・家族・知識は時間でしか買えない資産
医師の手元にある資産は、現金や金融資産だけではありません。
- 健康資産: 睡眠・運動・食事・メンタル。当直で削られると、回復に倍の時間がかかる
- 家族資産: 配偶者・子供との時間。子供の成長と同期した有効期限がある
- 知識資産: 投資・税務・経営・専門性以外の学び。複利で効く
これらは時間でしか積み上げられず、お金で買い戻すことができない。当直で稼いだ50万円は、削れた睡眠時間や子供の成長を取り戻してくれません。
うさ子 当直バイト1回で5万、月10回入れたら50万円ですもんね。それを削ってまで健康に振るって、感覚的にもったいない気がしちゃいます。
ナマケン そこが累進課税と社保の構造とセットで効いてくる。50万円のうち税金と社保で半分以上が消えるなら、手元に残るのは20〜25万。代わりに失う睡眠・家族時間・健康のほうがずっと高くつく
月+50万円のバイト vs 投資への置き換え
具体例で考えます。
- A. 当直2回追加 → 月+50万円(手取り20〜25万)/睡眠時間-20時間/家族時間-2日
- B. その時間を読書・運動・家族に振り、月20万円をNISA・iDeCoに積立 → 健康・知識・家族時間が増え、年240万円が複利で運用される
5年後・10年後の差は、お金の側面だけでも逆転します。NISAで月20万円を年5%で15年積み立てれば、約5,300万円の運用資産になる計算です。
A案の手取り増分(年240〜300万円)を全部使い切る生活と比べて、Bのほうが遥かに豊かです。そして健康と家族時間という「時間でしか買えない資産」は、Bにしか積み上がらない。
マイクロ法人 × NISA × iDeCo は「節税×運用×時間」の3点セット
この分散投資の発想を、医師が制度的に実装できる仕組みは揃っています。
- マイクロ法人: 社会保険料の最小化 → 手元に残る現金を最大化
- NISA: 年間360万円までの運用益が非課税
- iDeCo: 掛金が全額所得控除、運用益も非課税
- 空き時間: 健康・家族・自己投資・複利の知識習得に振る
3つの仕組みを掛け算すると、医師の人生設計は別物になります。僕自身もこの3点セットで運用していて、節税で削減した分を全額NISA・iDeCoに振り、空いた時間でブログや家族との時間を取り戻しています。
NISAとiDeCoの具体的な運用方針は別記事にまとめています。
まずAルートかBルートか、自分の立ち位置を決めよう
Aルート(フリーランス転身)は自由時間の獲得、Bルート(マイクロ法人化)は事業の器を持って社会保険料の計算基礎を最適化することが目的です。組み合わせるとナマケンの実数値で年148万→26万円の削減効果が出ます。
ここから本題です。医師が累進課税と社保の構造から距離を取る再設計ルートは2つあります。
Aルート:フリーランス転身で自由時間を取り戻す(勤務医向け)
フリーランス麻酔科医・産業医・在宅医療など、医師の働き方は思った以上に多様化しています。時給は勤務医時代と同水準か、それ以上になることも珍しくありません。
そのうえで、労働日数・労働時間を自分で設計できる。週4日勤務 + スポット、年収1,500万円前後の生活が現実的に組めます(ナマケンの場合)。
転身に必要なのは、覚悟と情報です。具体的なフリーランス麻酔科医のロードマップは、別記事にまとめています。
転職エージェントの相談だけでも、自分の市場価値と働き方の選択肢が驚くほど明確になります。
無料登録・退会自由
Bルート:マイクロ法人で事業の器を持つ(フリーランス医師向け)
Bルートは、すでにフリーランス医師として働いていて、医療以外に載せたい事業(ブログ・執筆・コンサル等)がある人向けの選択肢です。
ざっくり言うと「自分が社長の小さな会社を1つ作って、自分に最低限の給料を払う」という仕組み。
自分が役員になって、役員報酬を月12,000円に設定する。それだけで、社会保険料の計算に使われる「給料のランク」が最低まで落ちます。
本業のフリーランス収入がいくら増えても、社会保険料はこの最低ランクで固定されるのがポイント。
配偶者がいれば「扶養」に入れられて、配偶者の国民年金保険料21万円も消えます。
僕の場合、年収1,500万円前後で国保のまま年148万円→マイクロ法人化で年26万円に下がりました。
差は年122万円。配偶者の扶養も加えると、年140万円超の削減効果です。仕組みの細かい計算は別記事に詳しく書きました。
マイクロ法人は段階で効く ── 事業の成長カーブに合わせて活きる
マイクロ法人の強みは、事業のフェーズごとに違う形で効果を発揮することです。
- フェーズ1 ── 事業が小さいうち。役員報酬を最低ランクにして社保最適化が主な効果。事業所得自体は小さくても、計算基礎の最適化だけで年100万円規模の差が出る
- フェーズ2 ── 事業が育ってきた段階。ブログ・コンサル・講演・YouTubeなどの売上が伸びれば、その所得を法人で受けて経費にしたり貯めたりできる。法人にかかる税率は、個人の累進の上の方より低い
- フェーズ3 ── 事業所得が本業に並ぶ規模。医師個人の給与所得と法人の事業所得を意図的に分散して、累進の上層に乗せない設計が可能になる
つまり「事業実態を持って法人を運用する」ことを前提に、事業の成長カーブに合わせて段階的に効いてくる仕組みです。作って終わりではなく、育てて効果が増す。ここが個人事業主との大きな違いです。
実数値の根拠と計算プロセスは、こちらに詳しくまとめています。
ナマケンのひとこと
マイクロ法人は帳簿で事業実態を残せて初めて成り立つ。設立から申告まで一気通貫できるマネーフォワードを設立初日から使っています。
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Aルート+Bルートの複合:ナマケン自身のケース
僕はAルートとBルートを同時に仕掛けました。
医局を辞めてフリーランス麻酔科医になり、その月のうちに合同会社を1社作ったのです。登録免許税は6万円。マネーフォワード会社設立を使って自分で登記しました。
結果として、自由時間と社会保険料削減が同時に手に入りました。年収はむしろ医局時代より上がり、社保が減ったぶん可処分所得はさらに増えました。そのうえで自由時間も増えた。
働き方の総合収支が一気に黒字に転じた瞬間でした。
順番を間違えないために──向き不向きを整理しよう
Aルートは勤務医に、Bルートはフリーランス医師に向いています。勤務医がマイクロ法人を作っても社保は減らず、むしろ二重加入で増える可能性があるので順番が大事です。
ここを間違えると逆効果になるので、しっかり整理します。
Aルート(フリーランス転身)が向いてる人・向いてない人
向いてる人
- 勤務医で多忙感が限界に近い
- 当直・オンコール・委員会など本業以外の負荷が大きい
- 自由時間に高い価値を感じている
- 副業や学びに時間を使いたい
向いてない人
- 医局・大学のキャリアパスにこだわりがある
- 開業・事業展開を本気で目指している
- 専門医取得など中長期の修練中
Bルート(マイクロ法人化)が向いてる人・向いてない人
向いてる人
- すでにフリーランス医師(国保加入)
- 年収1,000万円超
- 配偶者を扶養に入れたい
- 比較的時間に余裕がある(法人運営の手間を吸収できる)
向いてない人
- 勤務医のままマイクロ法人を作ろうとしている → NG
- 個人事業主のままで対策しようとしている → 効果薄
- 年収1,000万円未満 → 法人維持コストで赤字リスク
個人事業主とマイクロ法人の決定的な差
「フリーランス=個人事業主」と思われがちですが、実は別物です。
個人事業主のままだと国保のままで、社会保険料は所得に応じて増え続けます。所得控除や経費で多少は調整できても、根本的な「保険料を最低ランクで止める」という仕組みが使えない。
これに対しマイクロ法人は、自分への給料を最低水準に設定して保険料を最小化できる。医療収入は個人で、副業や経費を法人で受ける二段構成にすると、節税と社保削減の両取りが成立します。
見えづらい副次効果──お金以外で得られるもの
税金・社会保険の知識、経営感覚、経費の概念、自由時間の余白。マイクロ法人とフリーランス転身は、お金以外にも医師人生に効く副次効果が大きいのが特徴です。
働き方の再設計は、お金の話だけではありません。
税金・社会保険の知識が血肉になる
医局時代、僕は税金も社会保険も「給料から勝手に引かれるもの」としか認識していませんでした。
フリーランス転身とマイクロ法人化を経て、初めて自分でコントロールする立場になりました。所得税の累進構造、社会保険料の計算式、青色申告、決算書の読み方。
知らなかった世界が一気に広がります。医師人生のリスク管理にも効く知識で、勤務医のままでは決して手に入りません。
経営感覚と経費の概念が身につく
法人を持つと「お金の出入りを設計する」という発想が日常になります。何を経費にして、何を自分の給料にして、何を会社に貯めておくか。
これは事業を成長させるためだけでなく、自分の人生を経営する感覚にも直結します。医師は「専門職」として生きていく道が一般的ですが、「経営者の医師」という選択肢もある。マイクロ法人はその入口です。
自分の時間を取り戻したことで生まれた余白
フリーランス転身で生まれた自由時間で、僕はブログを書き、家族と週末を過ごし、ジムに通ったり、趣味の銭湯巡りを楽しめるようになりました。医局時代には絶対にできなかった時間の使い方です。
「稼がない選択」が生んだ余白が、結果として副収入や知識資産につながっていく。働き方を再設計する戦略は、お金以外のリターンも大きいのが特徴です。
注意点──この戦略が向かない人・落とし穴
事業実態のない法人化は否認・規制リスク。加えて法人維持コスト年20-30万円・老齢厚生年金の減少・設立の手間・転身リスクがあるため、年収1,000万未満や開業志向、社保削減目的だけの医師には向きません。
良い面ばかり書くのはフェアではないので、注意点も明記します。
法人維持コスト(年20〜30万円)
事業実態があっても、法人を持つ最低限のコストはかかります。法人住民税の均等割(年7万円)、税理士報酬(依頼すれば年10〜20万円)、決算実務の手間が発生します。
年収1,000万円未満だと、社保削減効果よりこのコストのほうが大きくなる可能性があります。
老齢厚生年金の減少リスク
自分への役員報酬を最低ランクにすると、厚生年金の積み立ても最低水準になります。将来もらえる年金は減ります。
ただし小規模企業共済・iDeCo・NISAで代替的に積み立てれば回避可能です。むしろ「自分で運用する」ほうが利回りが高いケースが多い。
設立・運営の手間
法人を作ると、定款作成・登記・口座開設・税務署届出・社会保険手続きなど、事務作業が一気に増えます。最初の半年は学習コストが高い。
マネーフォワード会社設立や freee などのSaaSを使えば、登記まで自分で完結できます。
転職リスク
Aルート(フリーランス転身)には収入の不安定化リスクがあります。医局のような長期雇用は失われ、案件は自分で取り続けなければいけません。
このリスクを乗り越えるための準備は、別記事にまとめています。
まとめ:「稼ぎ方を変える選択」が医師の人生総合収支を整える
医師の手取りを増やすには、年収を追うのではなくAルート(フリーランス転身)とBルート(事業の器としてのマイクロ法人)で時間を取り戻し、健康・家族・NISA・iDeCoに分散する発想が必要です。両軸の組み合わせで年140万円超の削減と週4日+スポットの稼働設計が現実になりました。
医師の手取りは、年収を上げるだけでは増えません。累進課税と社会保険料の構造が、時間あたり手取りを内側に折り込んでいきます。
ここから距離を取る再設計ルートは2つ。
- Aルート:フリーランス転身 — 勤務医が自由時間を取り戻す
- Bルート:マイクロ法人化 — フリーランス医師が事業の器を持って社保の計算基礎を最適化(事業実態が前提)
両方を組み合わせると、僕の実数値で年140万円超の削減と、週4日+スポットの稼働設計が手に入りました。削減した社保と空いた時間は、健康・家族・NISA・iDeCoに分散しています。
医師の人生総合収支は、年収最大化ではなく「働き方の経営」で取り戻すものです。「稼がない選択」と書きましたが、正確には「稼ぎ方を変える選択」。時間を売る働き方から、仕組みを設計する働き方へ。
うさ子 年収を追いかけるんじゃなくて、働き方そのものを設計し直すって発想ですね。
ナマケン そう。医師は専門職として優秀でも、お金の構造を知らないままだと一生負担を背負ったまま走り続けることになる。気づいた人から距離を取っていける
勤務医のあなたなら、まずはAルート。フリーランス医師のあなたなら、次はBルート。すでに両方仕掛けたあなたなら、その先の資産設計と知識投資へ。
そして最後にもう一度言いたいのは、お金を稼ぐことは幸福と同義ではない、ということです。稼ぎ続ける働き方を選ぶほど、健康と時間と家族という、本当の意味で幸福を支える素材が削れていく。
ここに気づけたかどうかが、医師の人生の分岐点になります。働き方の再設計は、医師人生の選択肢を一気に広げます。
ナマケンのひとこと
どちらの道を選んでも、お金の流れを把握する基盤は必要。マネーフォワードクラウドはフリーランス・マイクロ法人どちらにも使える土台で、僕は1日も欠かさず帳簿に向き合っています。
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FAQ
累進課税と社保の構造、フリーランス転身・マイクロ法人化に関するよくある質問を5つにまとめました。
Q1. 医師の手取りはなぜ年収を上げても伸びにくいのですか?
所得税は年収が上がるほど税率が上がる累進構造のため、医師は高年収ゆえに手取りが伸びにくく、時間あたりの手取りが鈍化していきます。年収500万円増やしても手取りが250万円しか増えない、という状況が典型例です。
Q2. 年収いくらから手取りの伸びが鈍りますか?
所得税率が33%になる課税所得900万円超(年収約1,200万円〜)から顕著に悪化します。年収2,000万円を超えると、額面500万円増やしても手取りは250〜290万円しか増えません。社会保険料の負担も加わり、可処分所得ベースの時給が下がっていきます。
Q3. 勤務医でも累進課税の対策はできますか?
マイクロ法人は事実上使えません。勤務先の社保との二重加入になりコスト増になるためです。ただし「フリーランス転身」という選択肢があります。自由時間を取り戻したうえで、転身後にマイクロ法人化するのが医師の働き方再設計の定石です。
Q4. マイクロ法人と個人事業主、どちらが社会保険料削減に有利ですか?
マイクロ法人が圧倒的に有利です。個人事業主は国保のままで、保険料を下げる仕組みがほぼありません。マイクロ法人は役員報酬を最低ランクに設定することで、社会保険料を最小化できます。僕の実数値で年100万円以上の差が出ました。
Q5. フリーランス転身とマイクロ法人化、どちらを先にすべきですか?
勤務医はまずフリーランス転身が先です。フリーランスになって国保へ移ってから、マイクロ法人を作る順番が正解です。逆順だと社保の二重加入でコストが増えます。すでにフリーランス医師なら、今すぐマイクロ法人化を検討してOKです。
医師の人生総合収支は、稼ぎ方ではなく「働き方の経営」で取り戻すもの。今のあなたが勤務医ならAルート、フリーランスならBルート。そして両方を組み合わせる先に、医師人生の本当の自由があります。
ナマケンのひとこと
僕がフリーランスになる前、最初に登録したのが医師バイトドットコム。求人の質と量が安定していて、麻酔科の単価感を掴むのに使いやすい。登録してメールを眺めるだけで相場感が掴めます。